2018.07.30コラム

タイのチャットコマース事情

オンラインショッピングの普及

タイでも通販物流インフラ、ネット環境の整備が急速に進み、オンラインショッピングが一般市民にも広がっています。
その中でもSNSを通じての個人間販売活動で 商品の提示から購入までのショッピングが完結する「チャットコマース」が タイのマーケット条件と適合し主流となりつつあります。 本レポートではタイの現状を踏まえチャットコマースの実態をご紹介します。

まずはじめに、タイのネット環境を説明します。
イギリスの調査会社のデータによると、携帯電話普及率が98%、SNS普及率は67%です。逆にパソコン普及率は25%程度であり、SNSを通じた商品購入の割合は世界一位と言われています。
次にSNS利用者数に関して、タイの人口が6900万人であるのに対して、

Facebook 5000万人(バンコクのアクティブユーザー数は世界第一位)
LINE 3300万人(世界第二位)
Instagram 1360万人

であり、18歳から34歳の年齢構成を中心に普及が進んでいます。

タイ人の特性として文章や文字よりもビジュアルで訴えるデザインを好むという傾向があり、それもInstagramなどのSNSが人気な要因のひとつです。

また、bangkokpostの記事によると全体のオンライン購入のうち50%がスマートフォンからの購入になっており、SNSを通じたeコマース取引額割合はタイのeコマース取引総額の51%を占めており、個人間の販売活動も重要な位置付けにあります。
以上のことから、タイのeコマースではデバイスターゲティングとSNSでのPRが、デジタルマーケティングにおいて重要だと言えます。

チャットコマースの例

そこで、本題のチャットコマースに関して検討していきましょう。

実際にタイの小規模セレクトショップにおけるチャットコマースでのPR方法/商品売買の流れを紹介します。

① InstagramやFacebookで商品紹介ページをつくり宣伝する。

このInstagramのアカウントでは自己紹介の欄に自社の公式LINEのIDを記載することですぐに問い合わせに繋げられるような工夫をしています。

② 顧客からの問い合わせにLINEで個別対応をする。

公式LINEは顧客からのLINE友達追加後や問い合わせがあると個別で対応します。
その際にサイズ別着用画像を顧客に提供し接客したり、通常のショッピングサイトではできない値引き交渉が可能な点が顧客側のメリットです。
Pantipなどのタイ最大口コミサイトも顧客が商品を購入する際に参考にしています。

thai chatcommerce line

③ 契約成立後入金案内を提示する。

顧客が購入を決定したら店側は銀行口座の番号をLINEで送信し、 期日までに振込をお願いするのと同時に顧客の住所を聞き、商品配送準備を進めます。 Prompt payとは電話番号やマイナンバーの登録によって、QRコードでの銀行振込を可能にしたモバイルアプリです。タイ政府が主導しており、現在は3000万人以上に利用されおり、クレジットカード決済が広がらない中、このようなキャッシュレスサービスが新しく登場しています。

④ アフターフォローや定期的に顧客に商品を紹介する。

LINE情報を知っている顧客に対して新着商品の紹介をしたり、販売促進を繰り返し行います。

以上の手順で販売活動を繰り返していきます。

まだ決済システムへの信用度が低く、 比較的安価な商品での販売活動がオンラインショップの主流ではありますが、 これからPrompt payのような信頼度の高い決済サービスが普及することで市場規模の拡大が期待されます。

InstagramのDM機能やFacebookメッセンジャーではなくLINEでの接客が主流の理由は、それらのツールよりもLINE利用者の方が相対的に多いことや、公式LINEは低価格で顧客全体への一斉送信が可能で利便性が良いことなどがあげられます。

つまりこのチャットコマースを活用することで、店側としては

⑴ウェブサイトを開設しなくても低コストで宣伝できる。
⑵顧客に応じてカスタマイズされた提案ができる。
⑶ただSNSを見ているだけの潜在的ニーズのある顧客に訴求できる。
⑷販売後も顧客との接点を保つことができる。

顧客としては、

⑴使い慣れたSNSで商品の購入ができ自宅まで届けてくれる。
⑵パーソナルな接客を受けることができる。
⑶着用写真が原寸大で参考になる場合が多い。

というメリットがあります。

商品の販売促進にSNSが活用されることは日本でも主流になりつつありますが、その後LINEのチャット機能で売買が行われるのはタイのeコマースマーケットの大きな特徴でしょう。

【参考】
日本貿易振興機構「アジアのEC 2017」https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/fb62cc2ca58764b0/20170022.pdf(2018年6月22日アクセス)
日本貿易振興機構「タイのアパレル市場に関する動向調査」https://www.jetro.go.jp/ext_images/jfile/report/07000583/thai_apparel.pdf(2018年6月22日アクセス)
WE ARE SOCIAL「DIGITAL IN SOUTHEAST ASIA2017」https://wearesocial.com/uk/(2018年6月22日アクセス)
News From Bangkok UNESCO bangkok「Scoring goals for International Literacy Day in Thailand」http://www.unescobkk.org/news/article/scoring-goals-for-international-literacy-day-in-thailand/