2018.07.30コラム

中国でのモバイル決済の普及

年々上昇を見せる中国人観光客

日本国内への中国人観光客の数も年々上昇しています。日本政府観光局のデータによれば、2016年の中国人観光客数は637万人、2017年は734万人。そして、2018年4月現在のデータを見ても、2017年の同時期と比べ、約18%の伸びを見せています。(2) いずれの年も、国籍別で中国人観光客の割合が最も多く、インバウンド対策では重要な存在です。

中国国内でのモバイル決済事情

現在、中国ではキャッシュレス化が進んでいます。スマートフォンなどの携帯端末を用いた、モバイル決済は中国国内の普及率は都市部で98%を超えると言われています。(1)

また、モバイル決済に限らず、クレジットカードなどの現金を用いない決済が進んでいます。すべての非現金決済は2018年1月~3月では、455億8500万件と前年同時期36.6%増です。その中でモバイル決済は109億6300万件とこちらも前年同時期から17.84%の増加を見せています。(3)

中国国内で最もポピュラーなモバイル決済手段と言えるものが「AliPay(支付宝)」と「WeChat Pay(微信支付)」です。そのユーザ数はAlipayが4億人、そしてWeChat Payは6億に及んでいます。(2017年8月時点)(4) 中国の人口が13.9億人(2017年現在)(5)である事を考えると高いシェアを誇っていることが分かります。また、AliPayは中国の大手ECサイト運営企業Alibabaが提供し、WeChat Payは中国で最も利用されているSNSのWeChat内で提供される決済サービスで中国の大手IT企業テンセントが運営しています。

以下のグラフではApple PayやAndroid Payなどの世界で利用されているモバイル決済手段との比較ができます。日本でも目にするApple Payは全世界で見ても、ユーザ数は0.87億人であり、WeChat Payの6分の1程度。中国国内でのモバイル決済がいかに普及し、ユーザーが多いことが分かります。

中国のクレジットカード事情

中国の内陸部では、VISAやMastercard等の日本ではよく見かけるクレジットカードに対応していない店も多いです。国民の所得差が大きいため、入会審査の条件があり、店側の手数料の負担が比較的大きいクレジットカードはあまり広まらず、中国政府が主導となった銀聯(ぎんなん)カードというデビットカード(預金口座から直接引き落とし)が普及しました。2013年7月に、人民銀行は「銀行カード収単(アクワイアリング)業務管理弁法」を公布し、オフラインのアクワイアリング業務において、第三者決済機関は中国銀聯を経由せず、直接に銀行と接続することを規定し、第三者決済機関のオフラインの銀行カード清算市場への参入を緩和しました。この法律が、以前のオフライン決済における銀聯の独占状態から、AlipayやWeChatがオフラインの決済市場に参入するきっかけになりました。

無人スーパーの出現

以下の写真は、中国広東省 深セン市の百鮮GOという無人スーパーで撮影したものです。自分のスマホで、WeChat Pay、AliPayでQRコードを読み取って決済を行うと商品棚が解錠し、冷蔵庫内の商品が取り出せるという仕組みになっています。現金での支払いには対応していません。10都市で展開(2018年7月時点)されており、人々の間でモバイル決済が当たり前のことになっていることが分かります。

店頭での決済方法

モバイル決済の二強、「AliPay」と「WeChatPay」は両者ともQRコード決済を採用しています。

店頭での決済の仕方としては、利用者のスマートフォンアプリケーションからQRコードを表示し、それを店側が読み取ることで決済が完了します。(6)  QRコードを表示するという点から、FelicaやApple PayなどのNFC(近距離無線通信)の端末自体に依存するサービスとは違い、ディスプレイさえあればどのような端末でも用いる事ができます。

また、店舗側もタブレットレジなどのカメラでQRコードを読み取れば良いため特別な機器も必要なく、手軽さが普及の要因の一つといえます。

そして、海外で用いる場合、利用者も店舗側も特に両替などの操作の必要がありません。店舗側はQRコードさえ読み取れば、自動的に直接人民元への換算が行われ決済が完了します。(7) このように海外での利用も手軽に行えるのは、観光客として大変嬉しいことです。

日本での導入

ここまで中国国内で普及しているモバイル決済について振り返りました。本稿で紹介した「AliPay」は38カ国、「WeChat Pay」は20カ国の国と地域をカバーしています。(8)「AliPay」と「WeChat Pay」に対応をすれば、中国人観光客のみならず、より広い地域のインバウンド対策になります。これら、モバイル決済サービスの導入は中華圏を中心とした外国人客の利便性向上に役立ち、レジ業務の効率化にも繋がるはずです。

【出典】
(1)「中国都市部はキャッシュレス社会へ」2016年5月25日(http://j.people.com.cn/n3/2016/0525/c94476-9063047.html) 人民網日本語版より

(2)「統計データ(訪日外客数)」(https://www.jnto.go.jp/jpn/statistics/since2003_tourists.pdf) 日本政府観光客より

(3)「中国、1-3月期のモバイル決済業務が前年同期比16.76%増」2018年5月25日(http://j.people.com.cn/n3/2018/0525/c94476-9464280.html) 人民網日本語版より

(4)「Number of users of leading mobile payment platforms worldwide as of August 2017」(https://www.statista.com/statistics/744944/mobile-payment-platforms-users/) Statistaより

(5) 国際通貨基金データ(http://www.imf.org/en/data)より